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論文

 最近、ブリックスという言葉が流行しはじめましたので、これについて考えてみたいと思います。
 ブリックスはBRICsという言葉ですが、女性の方は最近、南青山にも店を出したイタリアのコモのバッグメーカーを想いだされるかもしれませんし、イタリアのサッカーのファンは今年1月からACミランの選手の公式キャリーバッグを提供している協賛企業を思い浮かべられるかもしれませんが、今日のブリックスはブラジルのB、ロシアのR、インドのI、中国のCの頭文字を集めた略語です。

 昨年の秋にアメリカの証券会社ゴールドマン・サックスが、2050年には、世界各国の経済規模の順番は、中国、アメリカ、インド、日本、ブラジル、ロシアになるという報告書を出し、現在1位のアメリカと2位の日本を除いた4カ国にBRICsという名前を付け、長期的な投資をするのなら、この4カ国が狙い目だと解説したので、注目されるようになった言葉です。
 ちなみに、2000年時点の経済規模では、中国が6位、ブラジルが9位、インドが13位、ロシアが18位ですから、この50年で大変化が発生するということになります。
 その傾向はすでに出始めており、2003年の国内総生産(GDP)を購買力平価換算、簡単に言えば物価に比例させて計算すると、中国は世界の13%を占め、7%の日本を抜いて2位に躍進しました。また、BRICsの4カ国の購買力平価による国内総生産は世界の23%にもなり、1位のアメリカの21%を抜いて、トップになります。
 また、購買力で換算しない国内総生産の実数でも、中国は2015年に日本を抜き、2039年にはアメリカを抜くとも予測されています。

 BRICsが注目されるのは、それだけではなく、現在でも世界の陸地の面積の28%、人口の43%を占めているうえに、資源大国でもあるからです。
 例えば、鉄鉱石の埋蔵量では、ロシアが世界の2位(15・6%)、中国が4位(9・4%)、ブラジルが6位(6・9%)で、世界の3分の1がBRICsに存在していますし、タングステンでは中国が1位(37・5%)、ロシアが3位(13・1%)で世界の半分以上、石炭ではインドが2位(15・9%)、中国が3位(12・0%)、ロシアが5位(9・5%)で世界の3分の1、スズ鉱石では中国が1位(28・3%)、ブラジルが2位(20・8%)でほぼ世界の半分というように、いずれも資源大国ですから、発展の潜在力があるということになります。
 それ以外にも、中国とインドはコンピュータ・ソフトウェアなどの分野で活躍していますし、ブラジルを除く3カ国は核保有国であり、軍事技術を背景にした技術力も相当のものです。

 そのような訳で、21世紀はこれらの国々と付き合うことが重要だというのがゴールドマン・サックスの報告書の趣旨ですが、1人当たりの国民所得が低ければ輸出も期待できないのではないかということになりますが、意外にも大量のモノを購入し始めています。
 確かに、2000年の1人当たり国民所得は中国が840ドル、インドが450ドル、ロシアが1660ドル、ブラジルが3580ドルで、日本の35620ドルと比較すると10分の1以下ですが、貧富の差があるので、一部の金持ちは高価な輸入品を消費しています。
 例えば、東京の秋葉原の商店街に行くと、中国人観光客が家電製品を大量に買っている姿を見かけますし、札幌の雪祭りにも中国からの観光客が多数押し寄せています。中国が本場の漢方薬も高級品は日本製のようで、金持ちは中国製の10倍もする値段の日本製を愛用しているという話もあります。

 輸出相手国としては素晴らしいようですが、問題は中国の人口が13億人にもなりますので、一部の階層が消費するだけといっても、大変な量になることです。10年ほど前に中国を訪問したときに、お土産にマオタイを買おうとしたら品物が無いので質問したところ、マオタイは高価なので一般の中国人は飲むことができなかったそうですが、少し余裕が出来てきたので一生に一度の結婚式の乾杯で使われるようになったところ、アッという間に無くなってしまったということです。マオタイは製造に10数年もかかるので、すぐに製造して需要に間に合わせられないので、品薄になってしまったということでした。
 また、昨年の夏には1ブッシェルあたり5ドル程度であった大豆の国際価格が現在は倍以上になりつつありますが、その原因のひとつは中国が大量に輸入するようにったことだと推測されています。
 また、東シナ海で獲れたイセエビは、しばらく前までは博多の港などに持ち込まれていましたが、現在では上海へ直行しているそうですし、最近ではマグロの刺身も中国で流行し始めました。現在、刺身にするマグロの消費は年間50万トンで、日本が9割を消費しており、中国ではまだ1000トン程度ですが、仮に中国の1割の人が食べても日本の人口と同じですから、乱獲が問題になっているマグロは危機的状況になりかねません。
 そのような課題もあり、BRICsの動向には目が離せません。





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