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論文

 モノを買うとき、我々は商店に出かけていって定価で買うというのが普通ですが、最近オークション、すなわち競売で買うという人が、若い人だけではなく多くの人々の間で増えています。
 このオークションの歴史は古く、紀元前5世紀のギリシャの歴史家ヘロドトスが書いた『歴史』という本のなかに、バビロニアでは女奴隷を競売で売買しているという文章があるほどです。
 また、我々はオークションというと、絵画や骨董品を競売する有名なサザビーズやクリスティーズを思い浮かべますが、サザビーズは1733年の創業、クリスティーズは1766年の創業ですから240年から250年の歴史がある商売です。
 しかし、今日お話したいのは、そのような由緒あるオークションではなく、新らしく登場しているインターネット・オークションとかネット・オークションといわれる仕組みです。

 これは細部では色々な仕組みがありますが、インターネット内部に用意された競売場に個人が売りたいものの情報を公表すると、世界中の人々が決められた時間内に入札して最高価格を提示した人が落札するという仕組みです。
 新しい分野ですから面白い話には事欠きませんが、まず普通のものから紹介しますと、1880年代のリーバイスのジーンズが出品され、これをリーバイス社自身が本物だと認定したうえ500万円で落札したとか、アメリカの独立宣言を印刷した公式文書が7億8000万円で落札されたなどがあります。
 これまで最高価格になったものは何かというと、ヤフー・オークションに出品された「タイムマシン」で、何と9兆円まで値段が高騰しましたが、実在しないものは競売できないということで、不成立になってしまいました。入札した人も、それを見越して値段を吊り上げたと思いますが、本当だったらどうするのか心配になります。

 変わったものでは、2000年のアメリカの大統領選挙の投票権をオークションにかけた人が8300人以上もいました。これは裁判所の命令で中止になりましたが、いまや何でもオークションという時代を象徴していると思います。
 また、アメリカのスペースシャトルを打ち上げている航空宇宙局NASAは古い点検装置の部品が入手できないということで、インテル8086というCPUや8インチのフロッピーディスクの読取装置をネット・オークションで入手しているという涙ぐましい話もあります。
 インターネットの世界ですから、当然、詐欺もあり、落札したモノが届かないということもありますが、26歳の人が他人のパスワードを盗んで、横浜港が見える豪邸などを11億円以上で落札して逮捕されたという事件もありました。

 しばらく前までは、ネット・オークションは一部の人の趣味と思われていましたが、最近では規模が拡大し、昨年の推定では、国内の数十のネット・オークション会社の売上総額は6000億円で、今年は1兆円になると予測されています。
 日本で最大のオークション・サイトは「ヤフー・オークション」ですが、登録会員数は386万人、平均して出品されている商品は600万点以上、毎月の取り扱い高は470億円程度になっています。
 これはどの程度の規模かというと、スーパーマーケットの大手であるイトーヨーカ堂やダイエーの月間販売額が1000億円弱、西友やユニーが500億円強ですから、それに匹敵する規模になってきたということです。

 このようなインターネットを経由して個人と個人が取引をするビジネスを「CtoC」「コンシューマー・ツー・コンシューマー」といい、インターネットが登場した頃から流通に変化をもたらすと言われていましたが、本当に実力を発揮してきたと思います。
 私も古本などは、古書専門のオークションで購入することもありますが、これまでのように、あるのかないのか分からない本を求めて神田の古書店街を歩く必要もなく、夜中でも簡単に欲しい本が見つかるということでも画期的です。
 もうひとつ社会的に大事なことは、不要な品物を廃棄しないで有効に役立てることが出来ることだと思います。自分にとっては不要な品物でも、それを欲しいと思う人は存在するわけですが、これまではフリーマーケットやアウトレット商店に持ち込まなければいけないので面倒でしたが、ネットワークで簡単に売買できるようになれば、必要なモノが必要なヒトに行き渡るということで、社会の無駄が減っていくことにも貢献すると思います。





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