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論文

 今日は元旦で一年の計は元旦にありという言葉もありますので、今年は何を目指すべきかを考えてみたいと思いますが、キーワードは「自立」です。
 昭和7年の「五・一五事件」で決起した将校の檄文に「今にして立たずんば、日本は滅亡せんのみ」という有目な言葉がありますが、まさに現在の日本は自分で立つ、すなわち自立しなければ、危うい状態にあると思います。

 第一に、食糧ですがカロリー換算で日本の食糧自給率は約40%、つまり、60%の食糧は海外に依存しているという状態です。農業大国フランスの140%、アメリカの130%は別格として、ドイツも97%、イギリスも80%ですから、日本は異常な状態です。
 しかも個別に見ると、大豆の自給率は5%、小麦は10%ですし、漁業大国ニッポンと言われているのに、魚類も半分しか自給できていません。
 また、国土面積の3分の2が森林ですが、国内で使用している木材の半分以上が輸入ですし、紙の原料となるチップなどは自給率20%以下です。

 第二に、エネルギー自給率の低さです。一応、20%は自給していると説明されていますが、その20%のうち16%が原子力です。この原子力エネルギーの原料であるウランは100%輸入しているのですが、国内で加工しているということと、いずれは再利用できるという名目で国産エネルギーに勘定していますが、実際は輸入資源であり、そうすると自給率は3−4%という恐ろしいことになってしまいます。
 鉱物資源も鉄鉱石や銅鉱石は自給率0%、塩でさえ15%しか自給していません。

 このようなモノは資金があって、買えるという状態にあれば問題はないかもしれませんが、日本の人口の10倍以上の大国である中国が次第に食糧輸入国、資源輸入国になりつつありますし、中国では電力も2005年までには2000万キロワット不足すると予測されており、先まで考えると食糧や資源の自給は真剣に考えなければいけない問題だと思います。

 人間にとって必須の物質で日本が自給できている数少ない資源が水です。現在、日本には1年に6500億トンの雨や雪が降っており、そのうち4200億トンが利用可能ですが、現状では900億トンと20%程度しか使用していませんので、余裕があるようです。ところが、日本は世界第二の水の輸入大国なのです。
 これは穀物や食肉という食糧の形で輸入している水=仮想水(バーチャル・ウォーター)が800億トン以上あるという大問題です。つまり、1トンの小麦を生産するためには2000トンの水が必要なので、日本が年間570万トンの小麦を輸入しているということは、114億トンの水を輸入しているのと同じということになり、その合計が800億トン以上になるということで、国内で利用している水の量に匹敵します。

 このように、食料や資源というモノが自立できていないということも重要な問題ですが、精神も自立も、これからの日本にとって重要な課題だと思います。
 これは適切な例かどうか分かりませんが、昨年、OECDが発表した医療統計によると、日本人は一年に平均して14・4回も医者にかかっているそうですが、これは国際平均の2・2倍です。
 数年前、アメリカで一晩だけ病院に入院したことがありますが、請求書が50万円近くも来て驚いたことがあります。それに比べれば、日本は国民皆保険の制度が優れているということの証明かもしれませんし、その結果、世界最高の平均寿命になっているわけですが、一方では、簡単に医者に依存するという自立の精神の欠如かもしれません。
 これも不幸な事例ですが、日本の自殺者の比率はハンガリー、フィンランドに次いで世界三位です。これも宗教的な背景や、様々な事情があることは否定できませんが、自立するという気持ちの欠如かもしれません。

 明治以来、日本は官尊民卑で、お上に依存するという体質でしたし、そのお上は先進諸国に依存するということで日本を維持してきたのですが、そろそろ、その気持ちと決別して、今年は自立をする元年になればと思っています。





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