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論文

 今日11月20日はボジョレ・ヌーボーの解禁日です。
 ボジョレというのは、フランス中部のローヌ河に沿った地域の名前で、ヌーボーは新しいという意味ですから、ボジョレ・ヌーボーはボジョレ・ワインの新酒という意味です。
 この地域ではマセラシオン・カルボニックという特殊な醸造法で、2−3ヶ月で飲むことのできるワインを製造しており、今年製造したワインの解禁日が今日11月20日の午前0時と決められており、盛大なお祭をするというわけです。
 このお祭は19世紀から始まっているそうですが、以前は11月15日になっていました。ところが、そうすると毎年曜日が移動して不都合だということで、1984年にフランス政府が毎年11月の第3木曜日にすると決定し、それが今年は11月20日というわけです。
 ボジョレ地方では750ミリリットルのボトルに換算して年間1億7000万本のワインを製造していますが、そのうち3分の1の5500万本がボジョレ・ヌーボーで、その半分の2800万本ほどが輸出されています。その輸出先は世界150カ国にもなりますが、一昨年の2001年から日本が首位になり、二位のドイツの700万本を抜いて、年間720万本を輸入しています。お酒を飲むことのできる年齢の国民14人に1本の輸入ですから相当な分量です。

 日本がボジョレ・ヌーボーを好きなことを示す数字があります。輸入しているボジョレ・ワインのうちボジョレ・ヌーボーの比率がありますが、アメリカやドイツは3分の1程度ですし、フランス嫌いのイギリスでは「ボジョレ・ヌーボーで大騒ぎをする時代ではない」と新聞が批判していることを反映して5%程度ですが、日本はなんと78%にもなっています。
 クリスマスやバレンタインデーも、もっとも大騒ぎをしているのは、ケーキ会社やチョコレート会社の宣伝に乗っている日本ではないかと思いますが、ボジョレ・ヌーボーもフランスに次いで盛大に祝っているのは日本ではないかと思います。とりわけ日本は日付変更線の関係で、世界で最初にボジョレ・ヌーボーが飲めるという宣伝も効果を上げていると思います。
 個人的嗜好としては、あまり美味しいワインではないと思っていますが、今年のヨーロッパは異常に暑かったので、ブドウの収穫が少なかった一方、ブドウの糖度が高いのでワインの当たり年といわれていますので、試されるのもいいかもしれません。

 しかし考えてみると、日本人は確かに初物が好きで、日本にも日本酒の初物を味わう「どぶろく祭」が全国各地に存在しています。
 もっとも有名なのは世界文化遺産にも登録されている岐阜県の白川郷で開催され「どぶろく祭」で、域内の5箇所の氏神様で9月末から10月中頃にかけて開催されています。
 この一帯は平家の落人の集落が点在しており、外部との交流が少なかったために、アワやヒエなどの雑穀で酒を造り、村人が楽しんでいたもので、神社の祭礼用の酒は無税でした。しかし戦後になって、酒税法が改正されて神社の酒にも課税されるようになっています。
 地区によって多少の違いはありますが、獅子舞などの奉納とともに、神社で特別に醸造された濁り酒が人々に振舞われています。

 このような「どぶろく祭」は全国各地に存在しているのですが、最近の話題は「どぶろく祭」を構造改革特区にしようという動向です。現在の酒税法では最低6000リットルを醸造しないと酒類の製造許可が与えられませんが、例外として祭礼のときの振舞い酒に限り、酒税を支払うという条件で少量でも許可が与えられていました。
 しかし、それでは時期が限られてしまうので、構造改革特区に指定してもらい、いつでも「どぶろく」を製造して観光客に振る舞い、グリーンツーリズムの支援策にしようというわけです。
 現在、財務省などが検討していますが、実現の方向にあるようです。
 日本は外来の文化を受け入れるのに寛容な文化を持っていますので、クリスマス、バレンタインデー、サンジョルディ、ボジョレ・ヌーボーなどを盛大にお祝いするのも結構ですが、同時に伝統ある文化も楽しんでほしいと思います。





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