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論文

 先週はハイテク戦争に使用されている偵察衛星について紹介しましたが、今日は別のハイテク兵器を紹介したいと思います。
 現在の攻撃の主力は巡航ミサイル、英語でクルージング・ミサイルといわれるものです。性能は1000キロメートル程度の距離を秒速300メートルという音速に近い速度で飛んで、目標の10メートル以内に半数が着弾するという精密な爆撃ができます。ゴルフに例えると分かりやすいと思いますが、距離10キロメートルのショートホールで二回に一回はホールインワンするという能力です。
 最新の巡航ミサイルはスリーウェイといわれる3種類の技術で誘導しています。第1はTERCOM(TERrain Countour Matching)、日本語で地形照合誘導といい、ミサイルにデジタル地図を搭載し、下向きのカメラで撮影した地形と地図とを照合して場所を確認しながら飛んでいく方法です。
 しかし、海の上とか平坦な場所だと変化が無いので、場所が分からなくなってしまうということで、第2にはGPS(Global Positioning System)、日本語では全地球測位システムといわれる技術が利用されます。このGPSについては、後程。紹介したいと思います。
 目標に接近すると、第3のDSMAC(Digital Scene Matching Area Correlation)、日本語でデジタル地域相関照合装置といわれるものが利用されます。これは、あらかじめ目標の写真がミサイルに記憶させてあり、目標に接近してきたら、ミサイルの頭部にあるカメラで撮影した画像と照合して目標を確認する方法です。最近では三次元のコンピュータ・グラフィックスで作成した地図が搭載されているので、どのような方向から突入しても大丈夫のようです。

 そこでGPSですが、もともとはアメリカの軍事技術で、大型自動車ほどの大きさのナブスターという人工衛星が24個、地上から2万キロメートルの上空に打ち上げられ、12時間かけて地球を1周しています。この衛星は1秒の10億分の1という精密な原子時計を搭載し、時刻の情報と位置の情報を発信していますので、受信機で同時に四個の衛星からの時刻を受信し、その差をもとに位置を計算するという仕組です。
 1978年から順次、ナブスター衛星が打ち上げられ、93年までに約1兆2000億円以上の費用をかけて完成し、本格的に稼動しはじめています。
 衛星からは2種類の信号が発信されており、ひとつは軍事用で誤差が20メートル以内、もうひとつは民生用で誤差が30メートル程度です。

 ワールド・トレードセンターに飛行機で突入した犯人もGPSを使用していたのではないかといわれています。
 GPSの受信装置は初期には大きくて高価だったのですが、現在では日本のカシオがプロトレック・サテライトナビという腕時計になった世界最小のGPS受信装置を発売していますし、緯度や経度だけではなく、地図も表示される懐中時計程度の製品も発売されており、値段も安売り店などでは数万円で売っています。
 私もカヌーや登山のときに利用していますが、別の新聞記事によれば、ウサマ・ビンラーディンも夜間に移動するときに使用しているのではないかといわれています。
 007シリーズの『トゥモロー・ネバー・ダイ』(1997)では、イギリスの戦艦が中国の領海内に侵入してしまい、イギリスと中国の関係が緊張状態になるという出だしですが、その原因はGPSの位置情報が狂わされていたということになっています。
 アメリカも敵方に利用されないために、戦争の場合にはGPSの情報を狂わせるということも予想できます。
 そのような重要な情報をアメリカの軍事技術に依存するのは問題だということで、ロシアはすでに独自のGPSであるGLONASS(GLObal NAvigation Satellite System)を運用していますし、欧州連合(EU)も1999年に独自のGPSである「ガリレオ」を2008年までに準備すると用意を始めています。中国も昨年12月に「北斗」というシステムの衛星を打ち上げ、2005年までには独自のGPSを運用する計画です。





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