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論文

 先週は知床半島をカヌーで周回してきました。
 知床半島は北海道の北東部にツノのように突き出した半島ですが、今回は初日に、半島の南側の羅臼側の道路の終点の相泊(アイドマリ)漁港を早朝5時に出発し、昼前に20km先の先端の知床岬を回り、北側の斜里側の海岸を20kmほど漕いで、15時頃にアウンモイという場所にある番屋に到着しましました。距離は合計40kmです。
 2日目も5時頃に出発して、40kmほど美しい海岸を眺めながら昼過ぎにウトロ漁港に無事到着で、合計80kmの旅でした。

 今回はめったにない好条件で、2日とも快晴、無風でしたが、さらに幸運だったのは、いろいろな動物を間近に観察できたことです。
 エゾシカはどこでも見かけるのですが、先端の知床岬ではゼニガタアザラシ(5頭)、斜里側の海岸ではヒグマ(5頭)、さらにミンククジラなども見ました。ここ7年ほど知床半島に毎年3回ほど通っているのですが、初めての経験です。
 知床半島に棲息しているヒグマは20頭以下と推測されており、そのうちの5頭を海上のカヌーから10数メートル先の海岸に眺めることができ、大自然を実感しました。

 ほんの数十年前までは、この自然環境を保存しようという考えよりは開発しようという考えのほうが強く、大正時代から昭和の初期には相当の人数が入植して開拓し、戦後は列島改造ブームで乱開発の危機の時代もありました。
 しかし、昭和52年に当時の斜里町長の藤前豊さんが中心になって国立公園内の私有地を買い上げるための「知床で夢を買いませんか!」というキャッチフレーズで「しれとこ100平方メートル運動」を全国に呼びかけました。
 これは一口8000円を寄付すると100平方メートルを購入したことになり、20年間で全国の5万人弱の人々から5億円強の基金が集まり、450ヘクタールの土地を購入しました。日本のナショナルトラスト運動の代表です。
 現在は、その購入した土地を太古の森林に戻すための「しれとこで夢を育てませんか!」にキャッチフレーズを変えた「100平方メートル運動の森・トラスト」が進められ、1口5000円の寄付を募集しています。寄付していただくと、動物画家・田中豊美さんの描いた美しい知床の森の絵をあしらった「募金証書」を送ってくれます。
 ご関心のあるかたは斜里町役場環境保全課(01522−3−3131内線124)に問い合わせてください。

 その太古の森を復元する努力をしている友人たちに話を聞くと、自然を開発することは簡単だけれども、復元することはいかに大変かがわかります。苗木を植えても、エゾシカに食べられてしまったり、枯れたりと簡単には回復しないので、百年はかかるだろうと言われています。

 今回、もうひとつ興味のあることに出会いました。羅臼町役場の友達が町勢要覧をくれたのですが、これがなんと新書なのです。普通の町勢要覧というと、町長さんの挨拶や人口や産業の数字が並んでいる味気ないもので、失礼ながら、ついつい帰りにはゴミ箱へという場合もあるのですが、羅臼町の町勢要覧はあげるのではなく買ってもらえるものにしようという発想で、題名も「銀の海峡」で新書版スタイル、内容も「魅せられし者たち」という章では、絵本作家の関屋敏隆さんや歌手の加藤登紀子さん、カメラマンの石井英二さんや関勝則さんを紹介し、また、知床半島を探検した松浦武四郎や早稲田大学探検部を紹介するという面白いもので、最果ての地での努力が伝わってくるものでした。これも羅臼町役場(01538−7−2111)へ注文すると一冊300円で販売してくれます。
 ぜひ知床の自然を回復する応援として購入していただければと思います。





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