TOPページへ論文ページへ
論文

 先週の日曜日に、北海道で「湧別原野オホーツク100KMクロスカントリースキー大会」に出場しました。
 白滝村にある大雪山の北側の斜面から出発し、オホーツク海に近い上湧別町の広場まで85キロのコースをスキーを履いて走るレースで、今年で9回目の出場ですが、今回は気象条件が悪く、9時間かけてようやく完走しました。
 トップは自衛隊の現役の隊員や全国の足自慢の人々で4時間を切って完走していますから、かなり最後の方を走っていることになります。このように後ろの方になると、人影もまばらになり、吹雪の中を走るのもなかなか厳しい体験です。
 出発地点は零下10度近いのですが、すぐ汗をかくほど暑くなるので、薄着の服装で出発しますから最初は震えながらの出発です。
 当然、空腹になるのですが、数キロメートル間隔で地元の方々が休憩所を用意して、暖かい飲み物や食べ物を提供していただいているので、途中で食事をしながら走ります。しかし、そこでのんびりしていると締め切り時間に間に合わないので、ほぼ9時間走りっぱなしの状態です。
 この大会には地域の方々の協力で成り立っており、ご紹介した途中の休憩所も集落の方々の善意ですし、85キロメートルのコースの整備も地域の建設会社が分担しておこなっています。

 スキーの競技は大きく2種類に分けられ、斜面を滑降したり回転したりして降るアルペン競技と、平地を走る競技とジャンプ競技のノルディック競技になります。
 このノルディック競技の周辺事情がこの数年、大きく変わり、スポーツの領域だけにとどまらない問題になってきています。
 先週、フィンランドのラハティで開催されたノルディック世界選手権で、日本はメダルを1個も獲得できず、ジャンプの4位と複合の5位が最高でした。
 前回の大会やオリンピック大会では華々しい成績だったのに、突然、急落してしまったのです。

 その背景の第1は技術についての経験の不足が挙げられます。
 クロスカントリーはスキー板の裏側の滑走面に塗るワックスが非常に重要なのですが、日本では製造していないため、ヨーロッパの製品を使っています。
 しかし、ノルディックが盛んな北欧と日本とでは雪の状態が違うため、雪質にあったワックスを選ぶ能力が劣っています。
 最近では日本も北欧からコーチを迎えているが、その効果はまだ十分に発揮されていません。

 第2は日本人に不利になる規則の改正があります。
 ジャンプ競技ではスキーの板は長ければ長いほど揚力が働いて有利になります。これまでは、身長プラス一定の長さでしたが、日本が勝ちつづけたため、ルールが改正され、身長が高ければ高いほど長いスキー板を使うことの出来るようなルールになり、大柄の北欧選手に有利な状況に変えられてしまいました。
 ジャンプと距離競争の両方で争うノルディック複合競技ではジャンプの結果に応じて距離競技のスタート時間に差を設けています。
 これまで日本選手は得意とするジャンプで時間を稼いで、距離レースで逃げ切るパターンだったが、ルール改正により、ジャンプでより遠くに飛ばないとクロスカントリーでのスタート差を獲得できないようになってしまいました。

 この背景にあるのは、ノルディックという名前からもわかるように、ジャンプや距離レースは北欧諸国に国技ということです。そういう環境の中に、日本人が乗り込んで、いい成績を上げると、そう簡単にナンバーワンを奪われるわけにはいかないと、様々な手段を使って王座を維持しようとしているのです。

 スポーツというのは一見、公平な競技のようですが、裏側では様々な駆け引きがあるという実例です。





designed by BIT RANCH / DEGITAL HOLLYWOOD
produced by Y's STAFF
Copyright(c) Tsukio Yoshio All Rights Reserved.